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平成27年個人情報保護法改正案と家賃保証業

平成27年6月9日 弁護士 中島 成

これは、実際に中島が平成27年6月9日の講演で使用したレジメを公開するものです。このレジメの全部又は一部を、セミナー、勉強会、講演、講義等で使用される場合、その他の目的で頒布・転載される場合は、あらかじめ当事務所の承諾を得るようお願いします。

目次

1、改正の経緯

個人情報保護法は12年前の平成15年5月に成立し、以後実質的な改正は一度も行われていない。
平成26年6月24日に「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」
(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)
適切な個人情報保護の下でのビックデータの活用の観点等からの見直し
平成27年通常国会に個人情報保護法改正案が、番号利用法(マイナンバー法)改正案とともに提出された。
同年5月21日衆議院本会議で可決。平成27年6月9日現在、参議院で審議中。

2、家賃保証業との関係

(1)要配慮個人情報の取り扱い
(定義)2条3項

この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

(要配慮個人情報は取得に本人同意が必要なのが原則)
17条2項

個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。

法令に基づく場合
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
当該要配慮個人情報が、本人、国の機関、地方公共団体、第七十六条第一項各号に掲げる者その他個人情報保護委員会規則で定める者により公開されている場合
その他前各号に掲げる場合に準ずるものとして政令で定める場合

(要配慮個人情報はオプトアウト禁止)
23条2項

個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データ(要配慮個人情報を除く。以下この項において同じ。)について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。

「社会的身分」:憲法14条(法の下の平等)に同じ言葉がある。部落差別、嫡出子・非嫡出子などが例に挙げられている。
「要配慮個人情報」の定義中「政令で定める記述等」の政令案は、平成27年6月8日現在未だ作られていない。
犯罪の経歴:前科をインターネットでダウンロードすることはどうか。
警察が公開した情報であれば「国の機関……により公開されている場合」(17条2項5号)に該当し、17条違反とはならない。
また、76条1項各号に掲げる者により公開されている場合、つまり、放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関等が公開した情報を取得しても17条違反にはならない。
  • ・法廷で掲示される訴訟当事者等をメモ等することはどうか。
(民事事件)
当事者の氏名・名称や事件名等が書かれているだけなので、「要配慮個人情報」に該当しない場合がほとんどと考えられる。

(刑事事件)
事件名から犯罪の経歴が明らかとなるため、「要配慮個人情報」に該当すると考えられる。しかし、裁判所が誰にでもみられる状態にしているから、「国の機関……により公開されている場合」(17条2項5号)に該当し、17条違反とはならないと一応考えられる。ただし、「公開」の概念について、要配慮個人情報保護の趣旨との兼ね合いで検討が必要。

・家賃支払状況は要配慮個人情報になるか
2条3項列挙事由に該当しない。また、他の要配慮個人情報のレベルからして政令で家賃支払状況が要配慮個人情報に指定される可能性も低い。

・生活保護受給は要配慮個人情報になるか
参議院の委員会でも議論されており、両方の意見があり得る。

・罰則
17条や23条に違反した場合で個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、違反行為の中止等の是正に必要な措置をとるべき旨の勧告がなされうる(42条1項)。勧告に係る措置をとらなかった場合で、個人の重大な権利利益の侵害が切迫しているときは、勧告に係る措置をとるべきことの命令がなされうる(42条2項)。また、緊急に措置をとる必要があると認めるときは、勧告を経ずに命令がなされうる(42条3項)。
これらの命令に違反すると、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる(84条)。

※ 個人情報取扱事業者(2条5項)(5000件要件の撤廃)
取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定めるもの(5000件)を個人情報取扱事業者から除外していた旧第2条3項5号が、削除された。


(2)利用目的の変更要件
15条2項

個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と「関連性」を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。
・「相当の関連性」→「関連性」に緩和された。具体的にはどのように違うのかは、はっきりしていない。
従前の改正案は、個人情報取得時に本人に利用目的変更がある旨通知、又は公表して、変更後の利用目的を本人に通知又は容易に知り得る状態に置いて、個人情報保護委員会に届け出れば、利用目的を変更できるというものだった。
しかし、反対意見が強く採用されなかった。他方、利用目的の変更を今より容易にすべきという意見に配慮し、「相当の」という文言を除くことになった。
妥協で生み出されたものなので、具体的な事例等の検討はまだ十分にされていない。
抽象的には、それほど大きな関連性がなくても何らかの関連性があれば利用目的の変更ができることになる。

(3)個人データの消去努力義務の新設
19条

個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならない。
・必要性がなくなる時期をどの程度とみるかにつき、合理的な判断が必要となる。

(4)オプトアウトによる第三者提供は届出が必要となり、公表される
23条
2項(届出)

個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データ(要配慮個人情報を除く。以下この項において同じ。)について、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出たときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。

一・二
(略)
第三者への提供の方法
(略)
本人の求めを受け付ける方法

4項(公表)

個人情報保護委員会は、第二項の規定による届出があったときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該届出に係る事項を公表しなければならない。(以下略)
・オプトアウトを利用する場合には届出義務と公表がなされることに留意しなければならない。

(5)第三者提供を行ったときの記録作成・保存義務
25条
1項

個人情報取扱事業者は、個人データを第三者(第二条第五項各号に掲げる者を除く。以下この条及び次条において同じ。)に提供したときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名又は名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成しなければならない。ただし、当該個人データの提供が第二十三条第一項各号又は第五項各号のいずれか(前条の規定による個人データの提供にあっては、第二十三条第一項各号のいずれか)に該当する場合は、この限りでない。

2項

個人情報取扱事業者は、前項の記録を、当該記録を作成した日から個人情報保護委員会規則で定める期間保存しなければならない。
・作成すべき記録内容は?
現時点では規則案はできていない。
法文では、少なくとも、個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名又は名称が対象となる。

(6)第三者提供を受ける際の確認、記録保存義務
26条
1項

個人情報取扱事業者は、第三者から個人データの提供を受けるに際しては、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項の確認を行わなければならない。ただし、当該個人データの提供が第二十三条第一項各号又は第五項各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

一 
当該第三者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものにあっては、その代表者又は管理人)の氏名
二 
当該第三者による当該個人データの取得の経緯

2項

前項の第三者は、個人情報取扱事業者が同項の規定による確認を行う場合において、当該個人情報取扱事業者に対して、当該確認に係る事項を偽ってはならない。

3項

個人情報取扱事業者は、第一項の規定による確認を行ったときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該個人データの提供を受けた年月日、当該確認に係る事項その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成しなければならない。

4項

個人情報取扱事業者は、前項の記録を、当該記録を作成した日から個人情報保護委員会規則で定める期間保存しなければならない。
・現時点では規則案はできていない。
・第三者による取得の経緯はどの程度のものが必要か?

※ 25条、26条、下記罰則83条は、名簿屋対策

(7)罰則
・17条、23条、25条、26条違反

個人情報保護委員会の命令(42条2項又は3項)に違反すれば、6月以上の懲役又は30万円以下の罰金(84条)。行為者+その法人又は人にも罰金刑を科する(87条)。
ただし、26条2項違反は(命令等は無関係で)10万円以下の過料(88条)。

・83条(不正目的提供等)

業務に関して取り扱った個人情報データベース等を不正利益を図る目的で提供又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金。
※ 個人情報取扱事業者(法人の場合は代表者等)、従業員又はこれらであった者が処罰対象。
※ 行為者+その法人又は人にも罰金刑を科する(87条)。

以上

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