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企業再生〜債務をカットして中小企業の事業を再生する方法〜

2、各方法のポイントやメリット・デメリット

(1)リスケ交渉

これは、元利金返済の比率や返済期間などの返済方法に猶予を与えてもらえば今後の返済は可能となっていくことを示す事業計画を作るなどして、それをもとに銀行等の金融機関と交渉するもので、金融機関と円満な関係の中で返済条件緩和を依頼するものです。
この方法では、返済条件緩和(返済の一時停止、利息のみを一定期間返済する。返済期間の延長や借り換え)は認められても、債権放棄をしてもらうのは困難です。
理由は、単に金融機関にとって厳しい方法ということのみならず、債権放棄した債権を税務上損金処理するには「経済的合理性」が認められることが必要であるものの(法人税法基本通達9-4-1、9-4-2)、この要件が相当厳しいものだからです。また、その要件を満たした債権放棄か否かを債権放棄時に確定的に判断することは困難なためその点についてのリスクを負うことになるからです。

※この点、(2)の特定調停は、調停内容に経済的合理性があることが求められていること等から、債権放棄した金融機関がそれを損金処理できる可能性が非常に高いと言えます。

他方、債務者企業からすれば、債権放棄を受けるとその債権額相当のお金をもらったことと同じであるため、債務免除益課税が発生します。ただし、この課税は、税務上利用できる繰越欠損金(欠損発生年度から9年以内の繰越欠損金。平成20年3月31日以前終了事業年度は欠損発生年度から7年以内)の額の範囲内であれば生じません。なお、資本金の額が1億円を超える企業等ではこれらの欠損金によって免除益課税の負担を免れる範囲は所得の80%を限度とする等の制限があります。
そこでこの点について、専門的で慎重な判断が必要となります。
また、金融機関とのリスケ等の交渉において、債権を債権回収会社や最近各地で組成されている中小企業のための再生ファンドに売却する話が出ることがあります。金融機関としては、債権の回収可能性を考慮した非常に低い価格で売却することで、その価格と債権額の差額を損金処理できます。
債務者企業は、免除益課税についての考慮は必要であるものの、非常に低額に債権を買い取った債権回収会社との交渉によって低額な支払をすることで、その余の債権を放棄してもらえる場合があります。
債務者企業に対する債権が売却されると、保証人たる代表取締役等の保証債務も一緒に売却されるのが通常です。この売却価格は、回収可能性を踏まえた極めて低額な価格となることが多く、保証人としては債権の売却を受けた側と交渉し、少額を支払うことでそれ以上の保証債務を免除してもらえることがあります。なお、保証人の債務は、あくまで保証していることを原因とするもので、金銭を借りいれた本人ではありませんから、免除益課税はありません。

リスケ交渉の最も良い点は、金融機関以外の商取引の相手方にリスケ交渉をしていることを知られずにビジネスが続けていけることです。
他方、デメリットは、対象金融機関全ての同意が必要となることに加え、債権放棄を伴わないリスケは債務全額を弁済することが前提で、その弁済ができる実現可能性のある事業改善計画を立てることができない過剰債務を負った場合には役に立たないということです。仮に当面のリスケをしてもらっても、出口が見えないため、金融機関がいつまでもリスケを繰り返すわけにはいかない時点がやがて到来してしまいます。
金融機関との任意交渉で債権放棄をしてもらうことは、現実には困難ですから、営業利益を出せるビジネスを維持しているか又はその可能性のある企業は、金融機関が債権放棄に応じやすい(2)の特定調停等や、債権者の多数決で債権放棄を決めることができる(6)の民事再生を視野に入れることになります。

巷言われることのあるDES(デット エクイティ スワップ=債務を株式にして、返済義務から免れたり、事業が軌道にのったときに当該株式を自社で買い取る約束をする方法)は、非上場企業にとって、金融機関が受け入れる現実的な方法とは言えません。同じくDDS(デット デット スワップ=債務を返済順位の低い債務にすること)も、金融機関が受け入れる現実的な方法と言い難く、中小企業がこれらを任意のリスケ交渉の中で成立させることは困難です。

【中小企業金融円滑化法終了の影響】
平成21年12月に施行され平成25年3月31日に期限が終了した中小企業金融円滑化法の下で金融機関から返済条件の緩和を認められた中小企業は約40万社とみられています(帝国データバンク調べ)。現時点では、金融庁の方針等によってこれら中小企業に対する金融機関による返済条件緩和の対応に大きな変化がみられないこと等から、企業の倒産が大きく増加するには至っていません。
しかし、今後、同法の終了を受け、過剰債務の処理を返済猶予だけでは達成できない多くの企業が、金融機関から「出口をどうするか」具体的に示すことを問われ、事業継続に行き詰まるケースが出てくるものと予想されます。また、仮に返済条件緩和がこれまでどおり継続し続けたとしても、今後金利の上昇があれば、過剰債務による多額の利息返済にも困難が生じる企業が出てくると考えられます。
【経営革新等支援機関(認定支援機関)】
金融機関とのリスケ交渉等のためには、どのような弁済スケジュールの変更をすれば、いつまでに当該企業は債務超過を解消でき、金融機関への返済が終了するかを実現可能性のある事業改善計画の提出とともに行う必要があります。金融円滑化法が終了するまで、金融機関はとにかくリスケの申請があれば受け付けるという雰囲気があったように思われます。しかし、同法が終了した現在、事業改善計画の中身がより厳格に問われ始める環境になっていると言えます。
そこで、そのような事業改善計画の作成等をサポートする役割が期待されているのが中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関(=認定支援機関)です。
既に銀行等の金融機関、税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士などが財務局から認定を受けています。関係金融機関全てが納得する実現可能性のある事業計画を作成するには、この認定支援機関を利用することが有用です。
また、認定支援機関による中小企業に対する事業改善計画作成等のサポートのためにかかる費用については、一定の限度で国から補助金が交付される制度が設けられています。
なお、認定支援機関は、あくまで当該中小企業のサポート役です。金融機関との交渉の場面では、認定支援機関を交渉の代理人とすることはできず、認定支援機関のサポートを受けながらも当該企業自らが行うか、弁護士とチームを組んで行うことが必要となると考えられます。代理人として金融機関と債務について交渉して支払猶予等を求めることは、法律事務に該当すると考えられるからです。

≪1、事業再生の方法

2、各方法のポイントやメリット・デメリット(2)特定調停≫

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