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会社の民事再生手続と保証人の保証債務の消滅時効との関係

具体的検討

(1)会社の民事再生手続で債権者が債権届出をすると、会社に対する債権全額の消滅時効が中断され、これによって保証人の保証債務全額の消滅時効が中断されます(民法152条、同457条)。債権届出は、免除部分・非免除部分の区別を前提にしないので、債権の全額について時効は中断されます。

(2)その後、債権調査に基づき債権者表に債権者名や債権額が記載される手続があります。この記載は、債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有します(民事再生法104条3項)。しかし、この債権者表の記載は、保証債務の時効期間に影響を与えるものではありません。
なぜなら、民事再生法104条3項は、債権者に対して確定判決と同一の効力を有するとしているだけで、会社(主たる債務者)に対してそのような効力を与えるものではないので、保証債務の附従性(保証債務は、主たる債務者の債務の弁済を確保するために存在するという性質)によって、保証債務が影響を与えられることはないからです。
仮に民事再生法104条3項が、会社との関係でも効力があると解しても、この条文は、民事再生手続の蒸し返しを防ぐため当該民事再生手続に密接に関係する範囲のみを規律するものですから、再生手続の外にある保証債務に影響を与えるものではありません。

(3)さて債権届によって時効が中断された保証債務について、いつから時効進行が始まるかについては、免除部分に関して、最高裁判例があります(会社更生手続に関する最高裁昭和53年11月20日・以下「最判」)。会社更生手続に関する判例ですが、民事再生手続においても同様に考えることができます。
最判は、免除部分についての保証債務の時効は、更生(再生)計画認可決定の確定のときから進行を開始するとしました。時効中断の効力は、更生手続参加による権利行使が続いている限り維持されるものであるところ、免除部分については、更生計画の認可確定があれば、免除が確定するので更生手続参加による債権者の権利行使が終了するからです。
そして、その時効期間は、従前の期間と同じであり、売掛債務の保証であれば2年、銀行等に対する金銭消費貸借の債務であれば5年(商法522条)です。最判のケースでは、その原審において、時効期間は従前どおりの5年(商法522条)であると判断され、最判はこれを維持しています。
また、最判は、非免除部分に対する主たる債務者(会社)の更生計画による弁済が、免除部分についての保証人の時効を中断しないことを前提に判断しています。再生債務者との関係では免除部分は再生計画認可確定によって既に消滅しているので、非免除部分を弁済しても、免除部分は何らかの効力を及ぼす対象でないからです。

(4)それでは、非免除部分についてはどうでしょう。これについての最高裁判例はありません。そこで検討しますと、

ア、
まず、保証債務の時効は、いつから進行を開始するでしょうか。
これについては、再生手続が終結したときからと解すべきです。
なぜなら、時効中断の効力は「更生手続参加による権利行使が続いている限り維持される」(最判)ところ、非免除部分について再生手続参加による権利行使が続いているのは、再生手続終結のときまでだからです。なお、民事再生手続では認可決定確定から3年間経過したら裁判所の決定によって民事再生手続が終結します(民事再生法188条2項)。
イ、
次に、非免除部分の保証債務の時効期間は何年でしょうか。
この点は、免除部分と同じく、従前の時効期間と同じと解すべきです。
再生計画認可が確定し再生計画内容が債権者に記載された場合は、再生計画上の権利は再生債務者との関係で確定判決と同一の効力を有することになり(民事再生法180条2項)、これによって主たる債務者との関係では時効期間は10年となります。しかし、再生計画は保証人に影響を及ぼさない(民事再生法177条2項)とされている以上、その再生計画内容が債権者表に記載されることによって、免除部分だけについて保証人の時効が10年と変更されることはないと解されるからです。
ウ、
それでは、再生債務者による非免除部分の再生計画に基づく弁済が、債務の承認として、保証債務の附従性により保証債務の非免除部分について時効を中断させるでしょうか。
最判のケースでは、再生債務者による非免除部分の弁済が、「免除部分」についての保証債務に時効中断効を与えないことは前提とされています。
しかし、非免除部分の弁済が、「非免除部分」についての保証債務に時効中断効を与えるかは触れられていません。
そこで検討しますと、この点は、再生債務者(会社)が再生計画に従って弁済をしても、その弁済によって保証債務の非免除部分が時効中断されることはないと解すべきです。
一般には、保証債務には主たる債務に対する附従性がありますから、会社(主たる債務者)の時効が弁済等による債務承認で中断されれば、保証債務の時効もそれに伴って中断されます(民法457条1項)。
しかし、もしそう考えれば、例えば再生計画が長期分割払いで、毎年再生債務者によって弁済が行われていた場合、再生手続終結から進行を始める保証人の非免除部分についての時効も中断され続けることになります。これでは、債権者はいつでも保証人に請求できたにも拘わらず、再生計画認可決定が確定してから3年経過し、そこからさらに従前の2年とか5年の時効期間が経過しても、まだ保証人に請求できることになります。これは権利の上に眠る者を保護しすぎる一方で、保証人に過大な責任を負わせるものです。
さらに、民事再生手続においては、再生計画は保証債務に影響を与えない(民事再生法177条)とされ、再生計画認可後は主たる債務と保証債務の附従性が切断されていることも、中断を認めない理由になり得ます。
また判例においても、民事再生手続と同様に再建手続である和議手続において、和議認可決定確定後の主たる債務者による非免除部分の弁済によっては保証債務の時効は中断されない、としたものがあります(岐阜地方裁判所平成14年7月29日)。

(5)(平成27年10月22日追記)
さて、免除部分についての保証人の消滅時効期間につき、東京地方裁判所平成26年7月28日判決(東京地方裁判所平成24年(ワ)第32166号)が現れました。同判決は、免除部分と非免除部分を区別せず、保証人の消滅時効期間は再生認可決定確定のときから進行し、その期間は10年と判断しています。

しかし、同判決は、免除部分と非免除部分を区別して検討をしていないものであり、また、控訴されず、高裁・最高裁という上級審の判断を経ずにそのまま確定したものです。
この点、免除部分についての時効期間がどうなるかに関しては、免除部分についての保証人の時効は認可決定確定のときから進行するとした上記最高裁昭和53年11月20日判決があります。
この事件は、保証人の消滅時効期間は、10年となるのではなく商事時効である5年のままであることを前提に、認可「決定時」から計算すると5年が経過しているものの、それより少しだけ時期が遅れる認可決定「確定時」から計算すると僅かながらまだ5年が経過していない事案で、そのため、免除部分の時効期間の進行開始時点がいつかが争われたものです。
そして、この原審である福岡高裁昭和52年3月4日判決は、保証債務の時効期間につき、「いずれも更生計画により免除されたものであるから、商事債権として5年の消滅時効にかかるものと解される」と明示的に判断しています。もし10年と解するのであれば、時効期間の進行開始が認可決定「確定時」ではなく、少しだけ早い認可「決定時」であったとしても、優に時効は完成していないので、開始時期が決定時と確定時のいずれかを地裁・高裁・最高裁が判断する必要はない事案でした。時効期間が5年か10年かは重要な法的論点ですから、最高裁も、時効期間5年という福岡高裁の判断を検討の上、問題がないと考えて上記判断をしたと考えられます。

なお、「民事再生法Q&A 再建型倒産処理手続の仕組み・実務処理のすべて・池田靖編著)154頁も、この問題について、再生債権者表の記載は確定判決と同一の効力を有するから時効は10年になるものの、10年になるのは、再生計画により弁済対象となった債権についてだけであり、免責された部分の債権は10年に延長されない。免責された部分の債権は、認可決定確定のときからその債権が本来有している債権の性質に応じて消滅時効期間が進行する。例えば、主たる債権が売掛金債権であれば2年ということになる。したがって、再生債権者は保証人に対して2年間権利の催促等をしないと、時効消滅により権利行使ができなくなるということになる旨述べています。
これら最高裁、福岡高裁、上記文献の結論の理論的根拠は次のとおりと考えられます。

会社の民事再生手続で債権者が債権届出をすると、会社に対する債権全額の消滅時効が中断され、これによって保証人の保証債務全額の消滅時効が中断される(民法152条、同457条)。これは、民法152条によって特に「再生手続への参加」に対して認められた効力である。民事再生法とは関係がない。



このとき保証債務は、本来の時効期間のままで中断している(当然)。



その後、債権調査に基づき債権者表に債権者名や債権額が記載される手続があり、この記載は、債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する(民事再生法104条3項)。
しかし、この債権者表の記載は、保証債務の時効期間に影響を与えるものではない。
なぜなら、民事再生法104条3項は、債権者に対して確定判決と同一の効力を有するとしているだけである。仮に再生債務者たる会社との関係でも効力があると解しても、この条文は、民事再生手続の蒸し返しを防ぐため当該民事再生手続に密接に関係する範囲のみを規律するものなので(新注釈 民事再生法 上 506頁 金融財政事情研究会)、再生手続の外にある保証債務に影響を与えるものではない。
この点、同新注釈 民事再生法 507頁は、「再生債務者等」にも同じ効力があるとしている。しかしこの「再生債務者等」とは民事再生法2条2号に定義があり、再生債務者、管財人のことを指す。保証人は入らない。
したがって、この再生債権者表の記載によって、保証債務の時効が10年となることはない。



その後、再生計画認可が確定し再生計画内容が再生債権者表に記載される手続がある。この場合、再生計画上の権利は再生債務者との関係で確定判決と同一の効力を有することになる(民事再生法180条2項)。
しかし、これは「再生計画の定めによって認められた権利については」であり(同項)、免除された部分とは関係がない。
また、再生計画は保証人に影響を及ぼさない(民事再生法177条2項)とされている以上、その再生計画内容が債権者表に記載されることで保証人の時効期間に影響を与えることはない。



結局、本来の保証債務の消滅時効期間が延長されることはなく、ただ民法の再生手続参加で時効が中断するという規程によって時効が中断されただけである。
したがって、保証人については、時効中断の効力が消滅したとき(免除部分については再生計画認可確定の時)から、本来の時効期間(5年とか2年等)が新たに始まることになる。

以上により、上記東京地裁平成26年7月28日判決は誤りと考えられます。

(6)(実質論〜債権者と保証人の利益衡量〜)(平成28年3月4日追記)
免除部分について保証債務が再生計画認可決定確定のときから、本来の、すなわち、商事債権であれば5年、売掛債権であれば2年で時効が完成すると解しても、債権者の利益ないし期待を害することにはなりません。
なぜなら、債権者としては、主たる債務者が弁済をしなければいつでも保証人に請求できたのであり、その後債務者が再生手続を申し立てたとしても、債権届けによって保証人に対する関係でも時効が中断され、裁判所における再生(更生)手続進行中であっても、主たる債務者の再生手続と無関係にいつでも訴訟などを起こせました。さらにその後、非免除部分は再生計画認可決定確定による債権者表への記載によって保証人との関係でも時効期間が10年となります。免除部分についても、再生計画認可決定確定のときから、新たに本来の時効期間(商事債権であれば5年、売掛債権であれば2年)が進行を開始するにすぎません。だから、これらの間に債権者が免除部分について保証人に対する回収努力をするのは当然のことであり、十二分な時間的余裕をもって可能です。免除部分について保証人が付いていたことに対する債権者の合理的な期待を何ら裏切るものではありません。
これに対し、免除部分についても時効期間が再生計画認可決定確定から10年に延長されるとすると、いわば債権者が取立訴訟の裁判で敗訴して存在が認められなかった主たる債務について、保証人だけが支払い義務を負わされるのと類似した状況となり、不合理を極めます。
たしかに、免除部分は取立訴訟で敗訴したのではなく債権者が多数決で免除したものであるという違いがあります。しかしこの違いから生じる債権者保護の保証債務に対する取り扱いの違いは、本来の時効期間(商事債権であれば5年、売掛債権であれば2年)が新たに再生計画認可決定確定時から進行を始めると解することで十分です。それ以上権利の上に眠っていた債権者を保護すべき必要はありません。
法律の明確な根拠なく、また主たる債務者は免除されているにもかかわらず、保証人にのみ過剰な責任を負わせる解釈には合理性がないのです。さて、免除部分についての保証人の消滅時効期間につき、東京地方裁判所平成26年7月28日判決(東京地方裁判所平成24年(ワ)第32166号)が現れました。同判決は、免除部分と非免除部分を区別せず、保証人の消滅時効期間は再生認可決定確定のときから進行し、その期間は10年と判断しています。

しかし、同判決は、免除部分と非免除部分を区別して検討をしていないものであり、また、控訴されず、高裁・最高裁という上級審の判断を経ずにそのまま確定したものです。
この点、免除部分についての時効期間がどうなるかに関しては、免除部分についての保証人の時効は認可決定確定のときから進行するとした上記最高裁昭和53年11月20日判決があります。
この事件は、保証人の消滅時効期間は、10年となるのではなく商事時効である5年のままであることを前提に、認可「決定時」から計算すると5年が経過しているものの、それより少しだけ時期が遅れる認可決定「確定時」から計算すると僅かながらまだ5年が経過していない事案で、そのため、免除部分の時効期間の進行開始時点がいつかが争われたものです。
そして、この原審である福岡高裁昭和52年3月4日判決は、保証債務の時効期間につき、「いずれも更生計画により免除されたものであるから、商事債権として5年の消滅時効にかかるものと解される」と明示的に判断しています。もし10年と解するのであれば、時効期間の進行開始が認可決定「確定時」ではなく、少しだけ早い認可「決定時」であったとしても、優に時効は完成していないので、開始時期が決定時と確定時のいずれかを地裁・高裁・最高裁が判断する必要はない事案でした。時効期間が5年か10年かは重要な法的論点ですから、最高裁も、時効期間5年という福岡高裁の判断を検討の上、問題がないと考えて上記判断をしたと考えられます。

なお、「民事再生法Q&A 再建型倒産処理手続の仕組み・実務処理のすべて・池田靖編著)154頁も、この問題について、再生債権者表の記載は確定判決と同一の効力を有するから時効は10年になるものの、10年になるのは、再生計画により弁済対象となった債権についてだけであり、免責された部分の債権は10年に延長されない。免責された部分の債権は、認可決定確定のときからその債権が本来有している債権の性質に応じて消滅時効期間が進行する。例えば、主たる債権が売掛金債権であれば2年ということになる。したがって、再生債権者は保証人に対して2年間権利の催促等をしないと、時効消滅により権利行使ができなくなるということになる旨述べています。

以上のとおり、上記平成26年7月28日東京地方裁判所判決は、上級審の判断なく確定したものにすぎないこと、上記最高裁判決及び福岡高裁判決等が存在すること、同東京地裁判決は、免除部分と非免除部分を分けて検討していないという重大な理論的問題があることから、保証人の時効期間についての同東京地裁判決の判断は誤りと考えます。
同判決の重大な理論的問題は、免除が確定することとの関係を検討していない点です。同判決は、「再生計画認可決定の確定により、主債務の消滅時効の延長の効力が生じた結果、……保証債務の附従性から延長の効果が生じると解される」とだけしており、認可決定の確定によって主たる債務が免除部分と非免除部分に分けられて確定することについて何ら検討していないのです。

以 上

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