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コーポレート・ガバナンスとは何か
                       平成19年(2007年)3月5日
                          弁護士 中  島   成

 頻繁に使われるようになったコーポレート・ガバナンスという言葉。しかし、それゆえに何を意味するのか分からないまま、なんとなく使われている場合が多い。実際、企業経営者も法律に携わる人々も、その言葉の意味をくっきりと説明することは容易ではないだろう。現代企業のキーワードであるコーポレート・ガバナンスという言葉、その意味を押さえておきたい。

  ガバナンス(governance)という言葉の文字どおりの意味は「統治、管理、支配」(新英和・和英中辞典 研究社)であり、それ自体は汎用的な言葉である。他方、「企業統治のあり方」を特に意味するときには「コーポレート・ガバナンス」(corporate governance=法人の統治)という言葉が使われる(岸田雅雄 早稲田大学商学学術院教授 「ゼミナール会社法入門」第6版 日本経済新聞社・以下「岸田」 37頁参照)。
 これまで米国、イギリス、ドイツ等で各国の事情を反映してそれぞれ特徴あるコーポレート・ガバナンス論が議論されてきており(江頭憲治郎 東京大学大学院法学政治学研究科教授 「株式会社法」有斐閣・以下「江頭」 47頁)、
 日本でも、1990年代以後の不況の中でコーポレート・ガバナンス論が活発化し、「効率的な経営の確保および経営上の違法行為の抑止(コンプライアンスの確保)のための法改正・制度運用の改善が、さかんに議論されるに至った」(江頭 46頁)。

 ところで、米国におけるコーポレート・ガバナンス論の特色が市場による統治であったのに対し、「わが国のコーポレート・ガバナンスは、もっぱら企業不祥事防止の観点から、監査制度の強化やメインバンクによる会社の監視の問題として論じられてきた」(岸田38頁)という特色がある。
 岸田は、「(資本主義社会の)担い手である企業は、社会のルールを守り、公正公平な企業活動を行わなければならない。この企業統治のあり方を示すのがコーポレート・ガバナンスである」と述べている(岸田 36頁)。
 このコーポレート・ガバナンスをめぐる近時の特徴として、「コーポレート・ガバナンス(企業統治)とは、どのような形で企業経営を監視する仕組みを設けるかという問題であるが、不正行使の防止(健全性)の観点だけでなく、近時は企業の収益性・競争力の向上(効率性)の観点からも、コーポレート・ガバナンスのあり方について世界的な規模でさまざまな議論がされている」(神田秀樹 東京大学大学院法学政治学研究科教授 「会社法」第8版 有斐閣・以下「神田」 147頁)ことが指摘されている。

 要するに、コーポレート・ガバナンスとは、企業の不正行為を防止して社会の信頼を得ること(コンプライアンス)と企業の効率的な運営確保とを両立するための企業統治のあり方についての議論であり、特に日本においては、どうすれば繰り返される大企業の不祥事の再発を防止できるかという点を中心に議論されてきたという特色を有するものである。

※岸田 39頁は、企業不祥事の観点から論じられてきたわが国のコーポレート・ガバナンス議論だが、最近の明治安田生命やカネボウ等の不祥事を見ても日本型コーポレート・ガバナンスが機能していないことは事実としたうえ、「すでに1930(昭和5)年に経済評論家の高橋亀吉氏は、日本経済の危機の基本的な原因を会社経営者の腐敗堕落に求め、「大株主のその場主義的我利の横暴と重役の腐敗にある」(株式会社亡国論)としたが、まさに歴史は繰り返されている」と指摘する。
                                    以 上


経営者の個人保証と不動産売却益課税

                        平成19年4月27日
                        弁護士 中 島  成
 中小企業の経営者は金融機関の保証人となるのが通常です。そこで、会社が破産等した場合、経営者は、自分個人が所有していた不動産を売却して保証債務を履行することを余儀なくされるケースがよくあります。
 しかしこのように保証人としての責任を果たした場合には、不動産の売却益に対する税金は安くなるという特例があるのです。実際上重要な知識ですからご説明します。

 5年を超えて所有している不動産を譲渡すると売却益(売却金額−取得費・譲渡経費−特別控除額)に対して15%の所得税と5%の住民税、合計20%の税金が課せらるのが原則です。
 他方、保証人としての債務を履行すれば、会社に対して、保証債務を履行したのと同じ金額を保証人に支払うよう請求できるのが本来です。これを求償といいます。
 しかし、その会社が破産等していた場合は、会社に支払能力がないので求償しても実際は払ってもらうことができません。いわば取りっぱぐれてしまうわけです。
 そこで、不動産を売却して保証債務を履行する場合、不動産の売却益が出ても保証債務を履行した額分だけ損することになります。そこでこの実態を税額計算に反映させることができるというわけです。
 具体的には、単純に不動産売却益に20%課税されるのではなく、(不動産売却益−保証債務履行額)に対して20%が課税されることになります。要するに、本来払うべきはずであった税金が、保証債務履行額×20%分安くなるというわけです。

 所有期間が5年以下の場合、投機的取引を防止する趣旨で、税率が譲渡所得税30%、住民税9%、合計39%と高くなります。しかし、損が発生する理屈は上記と同じなので、同様に保証債務を履行することで、単純な不動産売却益に課税されるより税金を安くすることができます。
                                以 上


【会社法に関する法務省令】
会社法施行規則、会社計算規則、電子広告規則


 平成18年5月1日、ついに会社法が施行されました。会社法は約300もの事項を法務省令に委任していたため,その制定が待たれていました。それが、平成18年2月7日に「会社法施行規則」「会社計算規則」「電子公告規則」として公布され、会社法と同時に施行されました。
 以下ではこれらの規則についてその概要を説明します。

1 会社法施行規則
 この省令は, 全238条で構成されており,@会社法の規定により委任された事項について必要な事項を定めるとともに,A会社法の規定により法務省令に委任された事項のうち他の省令で定める事項についてその旨を明らかにするものです。
主な項目
ア.親会社・子会社の定義(法2条2,3号関係)
 親会社及び子会社の定義として,従来の持ち株数を基準とする形式基準に代えて,「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」という実質基準を用いることとしています。また,親会社及び子会社には,会社以外の法人,法人格を有しない組合等も含まれることとしています(規則3,4条)。
 これは,現行の財務諸表等規則8条4項の内容とほぼ同一の内容で,証券取引法と会社法で親子会社の定義は平仄を合わせたことになります。

イ.株主総会の招集(法298条関係)
 @株主総会の開催日を前年の開催日と著しくかけ離れた日とした場合,A公開会社が集中日に株主総会を開催する場合には,理由を定めなければならないとされています(規則63条1号)

ウ.取締役等の説明義務について(法314条関係)
 取締役等が株主総会において説明義務を負わない場合として,
@株主が説明を求めた事項について説明をするために調査をすることが必要である場合(会社が総会の日の相当の期間前に通知を受けていた場合や説明のための調査が著しく容易な場合を除く),
A説明により会社その他の者の権利を侵害することとなる場合,
B実質的に同一の事項について繰り返し説明を求める場合
Cその他説明しないことに正当な理由がある場合
を規定しています(規則71条)。

エ.総会議事録の署名
 商法では株主総会議事録の議長及び出席取締役の署名または記名押印が必要でしたが,会社法施行規則では,総会に出席した役員及び議長の氏名を記載すれば足り(規則72条3項4号・5号)署名または記名押印までは不要になりました。

オ.社外取締役等の選任関連
 公開会社が社外取締役等を選任する場合の選任議案の参考書類に,当該候補者が当該会社の特定関係事業者である会社等の業務執行者や当該会社の業務執行者の配偶者,三親等以内の親族等であることを株式会社が知っているときにはその旨を記載する必要があります(規則74条4項6号)。
 また,会社が社外取締役を選任した場合であって,当該社外取締役が他の会社の業務執行役員等であるときは,その事実及び当該会社と他の会社との関係を,当該社外取締役が社外が他の会社の社外役員を兼任している場合はその事実を事業報告の記載事項としています(規則124条)。

カ.取締役の報酬に関する議案
 取締役の報酬に関する議案を株主総会に提出する際には,株主総会の参考書類に報酬の算定基準を記載する必要があります(規則82条1項)
 また公開会社で社外取締役がいる場合には,社外取締役の報酬算定基準は他の取締役と区別して記載します(同3項)

キ.内部統制システム(法348条3項4号,362条4項6号,416条1項1号ホ)
 会社法は,業務の適性を確保する体制,すなわち内部統制システムの具体的内容を法務省令に委任していました。会社法規則によれば株式会社の業務の適正を確保する体制とは,
@取締役(執行役)の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制,
A損失の危険の管理に関する規程その他の体制,
B取締役(執行役)の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制,
C使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制,D当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制等
であるとを規定しています(規則98条,100条,112条2項)。
 また,内部統制システムに関する事項を取締役会で決定したときは,その概要を事業報告の内容としなければならないとされています(規則118条2項)
 
ク.買収防衛策の事業報告への記載
 会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本指針を定めている場合には,以下の内容を事業報告の記載事項としています(規則127条)。
@基本方針の内容,
A方針に照らして不適切な者が支配権を獲得することを防止するための取組み(いわゆる買収防衛策)の具体的内容,
B防衛策の合理性に対する経営陣の評価と意見等

ケ.株主代表訴訟を行う際の提訴請求の方法等(法847条関係)
 株主代表訴訟をする場合には,会社に対して,会社が取締役等の責任追及等の訴えを提起するよう請求することが必要になります(法847条1項)。その際に株主はは,@被告となるべき者,A請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実を明らかにしなければならないことされました(217条)。
 また,提訴請求を行った株主に対して交付する不提訴理由書においては,@会社が行った調査の内容,A請求対象者の責任等の有無についての判断,B請求対象者に責任等があると判断した場合にもかかわらず提訴しなかったときはその理由を明らかにしなければならないこととしています(218条)。

コ.ホームページ等による開示
 株主総会参考書類における記載事項の一部(94条),事業報告における記載事項の一部(133条3項)ホームページ等で開示することにより,書面による提供の省略することが可能になりました。



2 会社計算規則
この省令は,会社の計算に関する事項,具体的には以下の事項を定めています。
 ・会計帳簿の記帳に関する事項(2編)
 ・計算書類等の種類,計算書類等の表示 に関する事項(3編)
 ・ 計算関係書類の監査の手続に関する事項(4編)
 ・計算書類等の株主への提供 に関する事項(5編)
 ・計算書類の公告等に関する事項(6編)
 ・剰余金の計算,分配可能額の計算 (7編)
 ・持分会社の計算に関する事項(8編)

重要な項目とその内容
ア.計算書類の種類 (91条1項)
 以下の4種類です。
 @貸借対照表
 A損益計算書
 B株主資本等変動計算書
 C個別注記表
 商法下で計算書類とされていた利益処分案・損失処理案は計算書類ではなくなりました。また営業報告書も事業報告書と呼び名が変わり、計算書類ではなくなりました。

イ.資本金の額が0円の会社の設立について明確化
 会社設立時の資本の額は,設立に際して株主となる者がその会社に払込み又は給付をした財産の額ですが(法445条1項),会社計算規則ではこの財産の額について所定の計算方法により零未満となる場合は零と定めています。(計規74条1項)。つまり,資本金0円の会社の設立も可能になりました。

ウ.計算書類等の監査期間
 監査報告の通知期限として,計算書類を受領した日から「○週間を経過した日」等と規定することにより,現行法と同様の監査期間を各監査機関に確保しながら,監査役等による監査が早期に終了した場合には,定時株主総会を早期に開催することを可能にしています(計規152条1項,158条1項,160条1項等)。
 さらに、監査役等と取締役の合意による監査期間の短縮も認めています。

エ.会計監査人設置会社における会計監査人の職務の遂行
 会計監査人は,監査役等に対する会計監査報告の内容の通知に際して,会計監査人の職務の遂行に関する事項を通知しなければなりません(計規159条)。
 また,監査役は,会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項を内容とした監査報告を作成しなければなりません(計規155条)。

オ.剰余金の分配可能額
 分配可能額の算定にあたっては,@貸借対照表に計上された正ののれんの額を調整した金額及び繰延資産()のれん等調整額)をも控除対象としました(計規186条1号)

カ.ホームページ等による開示
 株主総会の招集通知に際して株主に提供しなければならない情報につき、
定款に定めることによって、注記表及び連結計算書類の全部につき, ホームページ等で開示することにで書面による提供の省略を可能とすることとしています(計規161条4項,162条4項)。 事業報告中の一定事項についても、定款に定めること等で同様に書面による提供を省略できます。


3 電子公告規則
 この省令は,電子公告調査(会社法942条1項)に関して
@電子公告調査を求める方法
A電子公告調査を行う方法
B調査結果通知の方法
C調査記録簿の記載
を定めています。





【株主権の濫用】

 会社は、経営者の利益ではなく、会社の共同経営者である株主や投資家の利益を図るために、透明な経営を行い、企業の効率性、生産性を高め、競争に生き残っていく企業体質を作らなければなりません。そのための会社の統治(コーポレートガバナンス)のあり方が昨今問われてきています。

 この点に関し、株主が経営を監視するための手段として、商法においても様々なシステムが用意されています。

 株主は株式会社の所有者ですから、株主はその地位に応じた権利として株主権を有しています。この株主権を通じて会社の経営チェックが図られます。株主は、最高意思決定機関である株主総会においてなされる議決権(商法241条)の行使を通じて会社の経営をチェックすることができます。そして、この議決権行使に関するいろいろなルールをはじめ、会社経営に不正があるような場合の裁判所への検査役選任請求(商法294条)、株主による総会招集権(商法237条)、株主名簿等の閲覧謄写請求権(商法263条)や株主代表訴訟(商法267条)などのシステムも用意されています。

 ただし、株式会社というシステムは、株主が他の株主とともに団体を構成し、この団体の営業活動を通じてその経済的利益を獲得しようとするものです。そこで、株主が自己の利益のために、会社全体または他の一般株主の利益を不当に害する方法で株主権を行使する場合には、それが権利の濫用として許されない場面が出てきます。

 もっとも、株主は本来自己の利益のために会社に参加しているのですから、具体的にいかなる場合に株主権の行使が権利の濫用になるかはとても難しい問題です。

 そこで、株主権の行使が権利の濫用ととして否定された例を紹介します。
 まず、仕手集団によって株式を買い占められ株主総会で取締役解任の決議等がなされそうになった場合に、会社から申し立てられた議決権行使禁止の仮処分が認められたケースがあります(東京地方裁判所商を63年6月28日決定)。この決定には理由が付されていませんが、申立書等を参考にすれば、理由は、会社の株式を買い占めた者が経営者側に高値で株式を買い取らせる目的のための手段として議決権を行使することは、権利の濫用となると判断したものと考えられます。

 他にも、取締役会側が議決権を行使できる株式の過半数を制している等の事情から、株主による総会招集申請が、権利の濫用として許されないとされたケース(神戸地方裁判所尼崎支部昭和61年7月7日決定)、株主代表訴訟が、会社を困惑させて抵当物件の任意処分や会社からの自己への融資を実現させようとする目的に出た場合に権利の濫用として却下されたケース(長崎地方裁判所平成3年2月29日決定)、会社と株主が意思を通じて、ただ申立手数料の節約を図ることを目的として株主代表訴訟を利用することは許されないとされたケース(東京地方裁判所平成8年6月20日判決)、株主名簿の閲覧謄写の申請が、不当な意図・目的によ
るものであり、権利の濫用として否定されたケース(最高裁判所平成2年4月17日)などがあります。






会社法改正の動向(平成16年2月現在)

   
表1 平成9年改正から平成12年改正まで
平成9年 @ 報告総会を廃止するなどの合併手続の簡素化
A ストックオプション導入
平成11年 @ 完全な親子会社を作るための株式交換、株式移転制度
A 子会社の業務内容を親会社の株主などにも開示させる
B 金融資産の時価評価を可能にする
平成12年 @ 会社の営業を他の会社に承継させるための会社分割の制度
A 子会社を使って総会屋などに利益供与をすることの禁止

※合併、株式移転、交換、会社分割という一連の改正によって企業再編のためのルール整備がほぼ完成




表2 平成13年改正
6月22日成立 @ 金庫株の解禁(自社株式の取得と保有の解禁)
A 単位株制度の廃止・単元株制度の創設
B 法定準備金制度の規制緩和
C 株式分割の際の1株あたりの純資産規制の
撤廃
D 額面株式の廃止など
11月21日成立 @ 株式の議決権内容に多様性をもたせる
例えば、定款で定めることにより、株主総会又は取締役会の決議事項の全部または一部につき、その決議の他に種類株主総会の決議を要するとすることが可能になり、これによってある種類の株主に当該事項についての拒否権を与えることができるようになった。
A 新株予約権制度の導入と関係規定の整備
B E-mailなどによる株主総会招集通知や議決権行使を選択的に可能にするなど
12月5日成立 @ 監査特例法上の大会社の監査役の半数以上を社外監査役とする
A 軽過失による取締役の責任の軽減化
B 株主代表訴訟への会社の参加手続を名定・取締役の責任を追及する訴訟で会社が和解できることの確認など



第3 平成14年改正
株式関係 @ 株式譲渡制限会社における種類株主の取締役・監査役の選・解任権
A 株券失効制度
B 所在不明株主の株式の売却制度
C 端株等の買増制度の整備
機関関係 @ 株主総会・社債権者総会の特別決議の定足数の緩和
A 株主総会招集手続の簡素化
B 株主提案権の行使期間の繰り上げ
C 取締役の報酬規定の見直し
D 大会社に委員会等設置会社制度を導入
E 大会社に重要財産委員会制度を導入
F みなし大会社制度の導入
計算関係 @ 資産評価等の規定の法務省令への委任
A 連結計算書制度の導入
その他 @ 現物出資等の目的財産の価格証明制度の導入

A 資本減少・法定準備金減少手続の合理化

B 外国会社規制の合理化

※平成13年、14年改正により、@企業統治の実効性の確保、A高度情報化社会への対応、B企業の資金調達手段の改善、C企業活動の国際化への対応、を柱とする商法の大幅な見直し作業が一段落した。




表4 平成15年改正
7月30日公布 @定款授権に基づく取締役会決議による自己株式の買受

A中間配当限度額の計算方法の見直し
8月1日公布
(法第134号)
@民法改正に伴い使用人の先取特権の規定(商法295条)を削除

A上記改正に伴い商法294条の2を商法295条に変更(株主の権利行使に関する利益供与の規定)
8月1日公布
(法第138号)
仲裁法制定に伴う用語の改正




表5 平成16年改正
6月9日公布
(法第88号)
株式会社の選択により株券を発行しないことができるシステムの創設
(商法部分については平成16年10月1日施行)
6月9日公布
(法第87号)
会社の公告をインターネットを利用する方法で行えるようにする電子公告制度の導入
(平成17年2月1日施行予定)







平成17年会社法の現代化の内容


 法制審議会の会社法(現代語化関係)部会は、平成16年12月8日、「会社法の現代語化に関する要綱案」をとりまとめました。平成17年通常国会において、要綱案に基づく法案が提出され、平成18年4月1日に新法の施行が目指されております。

 この要綱案の基本方針は、

@現代語化(条文の平仮名口語化、用語の整理と解釈の
        明確化の観点からの規定の整備、会社法と
        有限会社法、商法特例法等を一つの法典に
        再編成する)
A実質改正(諸制度間の規律の不均衡の是正、最近の
        社会経済情勢の変化や企業実体に対応す
        るための各種制度の見直し)

となっています。

 要綱案の主な内容は以下のとおりです。


会社の種類
(1) 株式会社と有限会社の統合

 現行の株式会社と有限会社を統合し、一つの会社類型(株式会社)として規律する。
 新法施行後は有限会社を設立することはできない。ただし、現行の有限会社法に基づいて設立された会社は、新法施行後も有限会社を名乗ることができる一方、有限会社が株式会社に移行するための経過措置も設ける。

(2) 合同会社(仮称)の創設

 出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係については、組合的規律が適用されるという特徴を有する新しい会社類型が創設される。 


会社の設立
(1) 最低資本金規制の撤廃

 最低資本金制度(株式会社1000万円、有限会社300万円)を撤廃する。ただし、債権者保護の観点から、純資産額が300万円以下の場合は剰余金があっても株主に配当できない。
(2)  払込の事実の証明

 払込保管証明に関する制度を廃止。設立登記の際には、残高証明書を提出すればよいことになった。

(3) 現物出資、財産引受、事後設立関係

@ 現物出資・財産引受について、検査役の検査が不要な場合を資産の価額が500万円を超えない場合に限定する。

A 事後設立の際の検査役の調査を廃止する。


株  式

 株式譲渡制限制度について、定款で、一部の種類の株式についてのみ承認を要するものとすることや、相続・合併等の事由による株式の移転についても実質的に譲渡承認の対象とすることができることになった。


機  関
(1) 機関設計

 以下に掲げる原則の下で、株式会社は取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、又は三委員会等(指名委員会、監査委員会、報酬委員会、執行役)を任意に設置できるものとし、株式会社の機関設計の柔軟化を図った。

(原則)
@ すべての会社は株主総会と取締役を設置しなければならない。

A 取締役会を設置する場合には、監査役(監査役会を含む)又は三委員会等のいずれかを設置しなければならない。
 ただし、大会社以外の株式譲渡制限会社で、会計参与を設置している場合はこの限りではない。

B 株式譲渡制限会社以外の株式会社は取締役会を設置しなければならない。

C 監査役と三委員会等は共に設置することはできない。

D 取締役会を設置しない場合は、監査役及び三委員会等をいずれも設置することはできない。

E 会計監査人を設置するには、監査役(株式譲渡制限会社以外の大会社については監査役会)または三委員会等のいずれかを設置しなければならない。

F 会計監査人を設置しない場合は、三委員会等を設置することができない。

G 大会社では会計監査人の設置を必須とする。

(2) 株主総会関係

@ 会計監査人等に計算書類を提出してから一定期間を経過しなければ定時総会を開催できないとの規制を撤廃する

A 定時総会の招集通知の添付書類に株主持分変動計算書の作成義務を追加する

(3) 取締役・取締役会関係

@ 取締役の任期は原則2年だが、株式譲渡制限会社は定款でそれぞれ10年まで延長できることとした。

A 取締役の解任は、原則として株主総会の普通決議でできることになった。

B 破産宣告を受け復権していない者が取締役の欠格事由から外されることになった。

C 取締役の対会社責任はすべて基本的に過失責任とした。

D 内部統制システムの構築の基本方針について、取締役会設置会社においては、取締役会の専決事項とし、当該決議の概要を営業報告書に記載することとした。特に大会社についてはその基本方針の決定を義務づけることとした。

(4) 株主代表訴訟関係

@ 次に掲げる場合は株主代表訴訟を提起できないこととされた。
(@) 訴えの提起につき、当該株主が自己若しくは他人の不正な利益を図り、又は会社に損害を加える目的を有する場合
(A) 訴訟の追行により、会社の正当な利益が著しく害されること、会社に過大な費用の負担が生じることその他これに準ずる事情が生じることが、相当の確率をもって予測される場合

A 株式会社が株主から提訴請求を受けながら、提訴期間内に提訴しなかった場合、会社は当該株主または取締役の請求により訴えを提起しなかった理由を書面で通知することとした。

(5) 監査役関係

 従来、小会社及び有限会社の監査役は会計監査権限しかないとされていたところ、監査役は、原則として一律に業務監査権と会計監査権限を有するものとし、株式譲渡制限中小会社のみ例外的に、定款で会計監査権限に限定できることとした。

(6) 会計参与(仮称)制度の導入

 取締役・執行役と共同して計算書類を作成する会社の機関。会計参与は公認会計士・税理士でなければならない。会計専門家が計算書類作成に参加することで、その信頼性を高めようとする制度。


計  算
 
 剰余金の分配に関する規制の整備・合理化を図る。


組織再編

(1)  吸収合併、吸収分割または株式交換において、消滅会社の株主に対して、存続会社等の株式を交付せず、代わりに金銭その他の財産を交付することを認める。


(2) 合併差損が生じる場合(消滅会社が債務超過会社の場合等)でも、所定の開示手続を採ることを条件に、合併を認める。


清  算
 
 清算手続は裁判所の監督に服するとの規定を削除する。








電子商取引における問題点とその解決方法


◆電子商取引における問題点とその解決方法
T 相手方との対面性がないのでパスワードやIDが盗まれて利用されたときには、他人になりすまして取引を行う事が容易となる。
その解決は、電子署名・電子認証によって本人確認を行う。またなりすましが行われたときパスワードやIDが盗まれたことについて本人に責任があり、本人と信じたことに取引の相手方には責任がないのであれば、民法の表見代理等のルールでなりすまされた本人が責任を負う場合があり得る。



U 消費者保護などのために書面の交付が法律上要求されている場合があるが、それがE-mailなどを利用した電子商取引にマッチしない。
 その解決は、民間同士の商取引では、法律上書面が要求されている場合でも相手方の承諾があればE-mailなどによって通知を行える(IT書面一括法)。



V パソコンの操作ミスによって申し込みなどをしてしまうことがある。
 その解決は、たとえクリックミスなどによって契約の申し込みなどをしてしまっても、錯誤を理由に無効を主張できるのが原則(電子消費者契約等に関する民法特例法)。



W インターネット上の住所であるドメイン名が不正に利用される恐れがある。
 その解決は、不正の利益を得る目的等で他人のドメイン名を取得・保有・使用する行為は、不正競争として損害賠償責任等を生じる(不正競争防止法)。



X インターネットが国境のないネットワークのため、トラブルが生じたときにどの国の法律によって解決するか(準拠法)、またどこの裁判所で裁判をするか(管轄裁判所)が極めて重要となる。
その解決は、準拠法は当事者の合意によって定められ(法例)、管轄裁判所も原則として同様。



Y 匿名性のあるネットオークションでは、代金の振り込みを受けても商品を送らないなどの無責任な行為が横行したり、特定商取引法や古物営業法などの規制を受けない個人がオークションに出品することで、返品可能性の表示がなされなかったり、買い取り相手の身分確認がなされず盗品が流通し易くなるなど、規制がとどかない取引が多数おこなわれてしまう。
 その解決は、インターネットオークションを主催する事業者に対し、参加する者の本人確認や出品の登録を求める提言がなされており(警察庁セキュリティシステム研究会)、また個人でも営利の目的で反復継続して取引を行っているのであれば業者と認定されて規制がなされる場合があり得る。





電子商取引に関する法律


   
◆電子商取引に関する法律
電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)  電子署名や認証業務の定義、認証機関の認定制度などについて定めている。
 また、電子署名がなされている情報は実際に本人が作成したものと推定すると定めている。
(電子署名・認証のしくみ)
 @本人が情報を秘密鍵で暗号化したうえで相手方に送る。

 A相手方はこれを秘密鍵とペアの公開鍵によって通常の文章に直す。

 B相手方はその公開鍵が本当に本人のものかについて、本人がその公開鍵を登録した認証機関に確認する。
特定商取引法 業者が特定商品や特定役務の通信販売をする場合について、その広告内容を規制し、また商品などを送付する前に代金を受領した場合の契約の成否についての通知義務を課す場合などを定める。
(通信販売とされる場合の具体例)
 ・Webサイト上で業者が特定商品などの広告をしてE-mailなどで申し込みをうける行為
 ・プログラムや映画、写真や音楽データなどをインターネット上で配信する行為
電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律 コンピューターの操作ミスによる申し込みなどが錯誤として無効となることを原則としたもの。また、E-mailのみならずFAXなどを用いて契約の申し込みに対する承諾をしようとする場合、相手方に承諾の意思表示が到達しなければ契約は成立しないとしている。
特定電気通信役務提供者の損害賠償で責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 他人の名誉を毀損する情報がWebサイトに掲載されたときのプロバイダやサーバーの管理運営者の責任について定める。
プロバイダ等が当該情報の送信を防止することが技術的に可能であって当該情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき等でなければ、プロバイダ等は損害賠償責任を負わないこと、権利が侵害されたことが明らかなときはプロバイダ等に対して情報発信者の氏名や住所の開示を請求できるとしている。
IT書面一括法 一定の場合に書面の交付を要求する法律について、相手方の承諾を条件にE-mailなどで通知することを許容している。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律 他人のID・パスワード等を盗用して他人のコンピューターを利用する行為などを処罰の対象としている。
不正競争防止法
(平成13年改正)
ドメイン名の不正取得等を、不正競争として損害賠償責任を生じさせるとしている。
商法平成13年改正 株主総会の議決権行使などをE-mailでも可能とした
刑法平成13年改正 クレジットカードなどの情報を盗んで不正に支払用カードを作るなどの行為を処罰の対象とした。


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