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ニューヨーク報告

企業再生を成功させるために最も重要なこととは何か 〜ニューヨークで学んだこと〜


写真は、マンハッタンのハーレムでガレージなどの壁絵を描き、ハーレムのピカソとして世界的に有名になっているフランコ氏の絵の前にて。
2007年9月23日
平成19年(2007年)9月21日から9月30日まで単身でニューヨークに滞在し、その間、ニューヨークで活躍する投資アドバイザリーのCEOや、日本のクライアントが多くを占めるという法律事務所、またニューヨーク州最高裁判所などを訪れるとともに、ニューヨーク日本商工会議所ではM&Aアドバイザリーの第一人者佐山展生氏のセミナーに参加したり、同会議所の方から直接お話しを伺うなどして、仕事上の見聞を広め、また有意義なネットワーク構築を図らせていただきました。


企業再生を成功に導く哲学

その中で、企業再生(ターニング・アラウンド)分野において世界屈指の地位を占めるアリックス・パートナーズのニューヨーク事務所において、世界有数のターニング・アラウンド・マネージャーとして活躍されておられるロバート・デァングレモンドさんとピーター・フィッツィモンズさんのお話しを伺い、食事を一緒にさせていただく機会も得、法的手段を使う使わないにかかわらず企業や事業の再生を図ろうとする上で最も大切なことは何か、について教えていただきました。
答えは、Patience and Honesty=忍耐と誠実さ、です。
再生の場面では、債権者、経営者、株主、取引先、そして従業員の5者が誰一人として全てを得るということはなく、財産を失う者もいれば、職を失う者もいる。名誉を失う者さえいる。皆が何らかを失う中で、皆がこれならばと納得できる合理的な着地点を見いだし、忍耐と誠実さをもってそれを合意点へと導いていくこと、これが最も重要なことである、というお話しでした。
あらゆる専門性を踏まえた上で、再生を実現するために最後に行き着く哲学、それが"Patience and Honesty"だったのです。これこそが、業種の異なる数多くの世界的な大企業、あるいは中堅企業を再生に導いてきたターニング・アラウンドの第一人者の言葉でした。
考えてみれば、必ずしもその業種の専門家ではないにもかかわらず、無数の多様な企業の再生にチャレンジして成功をおさめる現実の中には、必ず汎用性のある最重要のポリシーないし哲学があるはずです。
それが何か?
いつも考えていたこの問いに、今回初めて答えを得ることができました。深い示唆と大きな拠り所を与えていただいた次第です。


再生場面での事業の適正評価

また、NYで活躍される投資アドバイザリーのCEOの方からは、再生でもM&Aでも、問題となっていることを定量化することが、なんとなく勘に頼って自分だけが損をするのではないかと思い込んでいる関係者を説得させるために不可欠であること、NY日本商工会議所で開催された上記佐山氏の講演では、企業の価値を検討する際にEBITDA(≒償却前営業利益=Earning Before Interest and Tax, Depreciation and Amortization)を何倍かして、これに非営業価値の実質的なプラス分を加え、そこから借入金を控除して企業価値を算定することで、おおよその実際の企業価値が簡単に把握できることに加え、この「EBITDAを何倍するのが適切か」という評価の根幹部分に関して、安定した長年の実績のある企業で5倍、右肩上がりの企業の場合でそれよりやや多い倍数を掛けるものの、これを10倍するM&Aの専門家はまずいない、というお話しを伺うことができました。
倒産にさらされる企業の事業譲渡の適正評価額を検討する場合に、この倍数をせいぜい3倍程度と認識し実践していたこれまでのあり方の正しさがこの佐山氏のお話しによっても検証でき、大変具体的で有意義なお話しを伺うことができた次第です。
さらに、NYの中心で法律事務所を経営しておられる菅野氏とその妻であるフローレンス弁護士からは、必ずしも大企業に至っていない企業にもNY進出などの需要があり、ネットワークも生かしてそのようなクライアントにワンストップで対応できる法律業務を行っていることを伺いました。菅野氏は興銀で22年間勤務して企業再生やM&Aに関わってこられた方で、その見識や人脈が大いに現在の業務に役立っておられるとのことでした。
今後、当事務所とも大いに提携していただき、クライアント企業の多彩な要望に応えていきたいと考えています。

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