保証会社による代位弁済が賃貸借契約解除に与える影響
不動産賃貸借契約等に関する注目の最新重要判例
		
		
		1、保証会社による代位弁済が賃貸借契約解除に与える影響
		
            - 【論点】
- 保証会社が代位弁済すれば、賃料不払いという賃貸人に対する債務不履行がなくなって賃貸借契約は解除できなくなるか。
(1)大阪高等裁判所平成25年11月22日判決
			- 【判示事項】
- (結論)
- 賃貸借契約は解除できる。
- (理由)
- 保証会社によって賃料の代位弁済がなされていても、賃借人による支払いではなく、これによって賃借人の賃料不払いという事実に消長を来すものではないから、賃貸借契約解除原因事実の発生を妨げるものではない。賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するにあたって代位弁済を考慮すべきではない。
 
 ※ 最高裁は、上告も上告受理申立も認めず、本判決は確定した。
- 【事案】
- ・平成23年12月15日賃貸借契約締結 賃料7万1000円、共益費5000円
- ・平成24年4月分〜平成25年3月分まで賃料不払い(同年2月から滞納を繰り返した)
- ・平成24年2月〜平成25年6月まで代位弁済
- ・平成24年5月2日に、賃借人は保証会社に求償債務15万8000円を払った。その後の支払いはない。
- ・催告は、訴状(平成24年9月13日)による。
- ・平成25年3月4日の準備書面で解除
- 【検討】
- 代位弁済がなされれば賃貸人の賃料債権は消滅し、さらに求償債権までなくなれば、完全に当該債権は消滅すると考えられることから、代位弁済がなされれば賃貸借契約解除ができなくなるのではないかが問題とされてきた。
 本判決は、賃借人の賃料不払いという「事実」は代位弁済によってもなくならないことを主な理由として、賃貸借契約解除を認めたものである。
 賃貸借契約の当事者は賃貸人と賃借人であり、賃借人がその最も主な義務である賃料を相当期間払わなければ、賃貸借契約における賃貸人と賃借人の信頼関係は破壊されたといえ、この事実は代位弁済によって左右されないから、本判決は妥当である。
			(2)残された問題点
			
			- ア.催告後相当期間経過前に、賃借人によって求償債務も払われたら、解除前に賃料債権は完全になくなるし、賃借人は催告に応じたと言い得る。
 この場合も催告期間経過によってそのまま解除できるか。
- ↓
- 本ケースでは、裁判所認定の催告の後、求償債務が賃借人によって払われていないから判断内容になっていない。
- ↓
- 本判決は、賃借人による賃料不払という事実が消えないことに重きを置くから、保証会社に対する求償債務の支払いも催告解除の効力に影響を与えないとも考えられる。
 しかし賃借人としては代位弁済がなされた以上、賃貸人に二重払いすることはできず、自らできることは求償債務の支払いのみである。しかも求償債務まで払われれば完全に当該債権は消滅するので、残された問題である。
- イ.平成27年通常国会提出予定の民法改正案では、催告期間経過時点での債務不履行の程度が軽微なら解除できないとされる。
- 催告期間経過までに、賃借人が求償債務も支払っていた場合、これに該当しないかが問題となる。
- ウ.本ケースにおいて最高裁は上告を認めなかったものの、これは本件が憲法問題と関係がないので当然。
 これと異なり、上告受理申立ての制度は、最高裁が法令の解釈に関する重要な事項を含むと判断したときに受理できるとされるもの。しかし、事件が熟していないときは最高裁は受理しないことがある。
- ↓
- したがって、本件についての最高裁の判断が確定したと断定することはまだできない。
			- ※ 特に、催告期間内に、賃借人が代位弁済された求償債務を支払ったときが問題。賃借人としては解除を止めるためにはそれしか方法がないこと、及び上記民法改正の方向性から問題となり得る。
 
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