民法改正(債権法改正)の重要ポイント
第2 改正の重要ポイント
- 無効から取消へ
- (要綱仮案 第3、2(1)(2))。(改正民法95条)
- 【ポイント】
- (1)意思表示に次のいずれかの錯誤があり、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、意思表示を取り消すことができる。
- ア 意思表示に対応する意思を欠くもの
- イ 法律行為の基礎とした事情(以下「上記事情」)についての認識が真実に反するもの
- (2)上記(1)イ、による取消は、上記事情が法律行為の基礎とされたことが表示されたときに限り、取り消せる。
- 【改正の理由】
- 契約が錯誤で無効となる場合についての判例内容を条文化するとともに、錯誤の効果として意思表示が「無効」ではなく「取り消せる」とした。
 無効であれば、誰でも無効であることを主張できることが原則であるところ、最高裁昭和40年9月10日判決は、原則として錯誤で意思表示をした者以外の者が無効を主張することは許されないとした。その効果は、取消しに近いものとなるため、効果につき、取り消すことができるものと変更した。
- 【影響等】
- この改正により、錯誤による意思表示の効果を喪失させるためには、錯誤によって意思表示をした者が、相手方に対し、取消しの意思表示をする必要がある。また、錯誤から脱して取消権を有することを知った時(以下「追認可能時」)以後、追認すれば取り消せなくなり(要綱仮案 第5、3)(改正民法124条)、追認可能時以後、当該契約の全部又は一部の履行をしたり、履行の請求をしたりすると追認されたとみなされ取り消せなくなる(民法125条)。また、追認可能時から5年間、行為の時から20年間経過すると取り消せなくなる(民法126条)。
 
 
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 これまでは、例えば、錯誤に気付いた後分割払いの代金の一部を払っていても、錯誤による売買契約無効を主張することができ、既に払った代金は不当利得として返還請求することができた。錯誤と自分で思っても無効となるかは裁判をしてみないと分からないという事情があるため、錯誤無効が否定された場合の債務不履行を防ぐため一応代金の支払いはしておくことがあった。
 しかし、今回の改正によって、錯誤に気づいた後代金を支払っておくと原則として法定追認となり、もはや錯誤による契約消滅(取消)を主張できなくなるので注意を要する。
 
 当該契約が錯誤によって取り消せることを相手方に主張しながら、念のため代金支払いを継続するような場合は、「この支払いは契約を追認するものではない」旨相手方に通知しておかなければ法定追認となり(125条ただし書き)、以後錯誤の主張ができなくなるので注意を要する。
