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更新料、敷引特約、通常損耗の原状回復費用をめぐるルール
〜最高裁判例と最近の重要下級審判例〜

3、敷引特約の有効性

(1)最高裁平成23年3月24日判決

(事案)
京都市西京区のマンション(専有面積約65.5平方メートル)、賃借期間2年間、賃料1か月9万6000円、保証金40万円、更新料9万6000円
・明け渡しの際、契約締結から明渡しまでの経過年数に応じた額を保証金から控除し(本件敷引金)、残額を返還する。

経過年数1年未満控除額18万円
2年未満21万円
3年未満24万円
4年未満27万円
5年未満30万円
5年以上34万円

・社会通念上通常の使用をした場合に生ずる損耗や経年により自然に生ずる損耗は、本件敷引金で賄い、賃借人は原状回復を要しない。

(2)消費者契約法10条との関係

・賃貸人が取得する金員(敷引金)の額について契約書に明示されている場合は、賃借人は、賃料の額に加え、敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結するのであって、賃借人の負担が明確に合意されている。
・通常損耗等の補修費用を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合は、同補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されている。敷引特約によって賃借人が補修費用を二重に負担するとはいえない。
・補修費用に充てるために賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは、通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から不合理ではない。
・ただし、当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎる場合は、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効となる。
・本件は、契約締結から明渡しまでの経過年数に応じて18万円ないし34万円を保証金から控除するもので、本件敷引金の額が、契約の経過年数や本件建物の場所、専有面積等に照らし、本件建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるといえない。また、本件契約における賃料は月額9万6000円であって、本件敷引金の額は、上記経過年数に応じて上記金額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていること、賃借人は、本件契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには、礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。
したがって、本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできない。

(3)最高裁平成23年7月12日判決

京都市左京区のマンション、賃借期間約2年間、賃料1か月17万5000円、保証金として100万円(預託分40万円、敷引分60万円)を賃貸人に預託し、明渡完了する等したときに、保証金の預託分40万円を賃借人に返還する(60万円は敷引する)というケースで、最高裁は、上記平成23年3月24日判決と同様の考えによって、この敷引特約を有効とした。

≪ 2、更新料の有効性 

4、通常損耗の原状回復費用を賃借人に負担させる特約の有効性 ≫

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