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中小企業の視点で理解する「会社法要綱」のポイント

会社分割の濫用にメスが入った

(9)会社分割における債権者の保護

近時、倒産に瀕した会社が「会社分割」という手法で新会社(以下「事業承継会社」といいます)に事業継続に必要な取引債務のみを承継させるケースが散見されるようになっています。この手法により、銀行などへの債務はもぬけの空になった既存会社(以下「分割会社」)のみが負うことで事実上債務を免れ、債権者を害する事態が発生しており、裁判所によって詐害行為にあたる等の判断がなされる事態が発生しています。
要綱は、分割会社が債権者を害することを知って会社分割をした場合、債権者は事業承継会社に対しても、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求できるとしています。
会社分割という手法では過剰債務を免れようとする事例は実際には中小企業で発生してきており、中小企業の視点からしても要綱に十分留意する必要があります。
また、要綱は事業譲渡についても同様の規律を設けるとしています。事業を廉価に譲渡し、譲渡会社だけが債務を負担する形にしても、事業譲受会社に請求がいく場合があるというわけです。
会社分割や事業譲渡によって既存の債権者を害することがないよう、事業を適正に評価し、その証憑を残し、債権者に透明な形で対価を分割会社や事業譲渡会社に支払うことが必要です。裁判所を通じて債権者に情報を開示し、債権者の多数決に従う民事再生手続きの選択も、これまで以上に視野に入れられるべきでしょう。

会社法制の見直しは、当初、会社法と金融商品取引法の一体化や、公開会社法の制定といった大企業のガバナンスの見直しを中心に機運が高まったものでした。しかし、審議を経て成立した要綱は、中小企業にも大きな影響を与えるものです。
法務・総務に携わる担当者は、今後の会社法制の見直しの推移に留意するとともに、要綱をベースとする改正内容を把握・検討して、来る改正会社法の施行に備えていく必要があるのです。

≪ 親子会社の株主に対する新たな保護規定の内容

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